20081127

after Morning

Gathering for Breakfast and Morning Music -朝食と音楽の会- のこと

 まずは余談から。1日目、砂丘館でのライブを終えたシバタ&アスナ、ラジオゾンデの4人は、今年の夏に行われた松本〜金沢のツアーの編集DVD(アスナさん作)を見ながら夜更かしをしていたそう。(このツアーの時、途中新潟に来ていただければよかったのだが。)眠い目をこすり、マリールゥに集合したのは、みな予定より少し遅め。マリールゥの中は朝食をこしらえている朝の匂いと湯気。朝の独特の空気の中ゆっくりと準備が進められました。青木隼人さんが葉山にあるギャラリーhacoさんで催した「朝の音楽と朝食の会」。マリールゥの鈴木さん夫妻がそのことにとても興味を持ち、この二日目の演奏会が企画されました。あまり早すぎない時間に始めようと、でも、まだ朝の8時半にオープン。一組、また一組と、お客さんがいらっしゃる。あたたかい番茶がもてなされました。砂丘館でのライブに引き続き、待ち焦がれていたこの時間の中にいる事が、ワクワクでよくわからなかった。


 青木さんの演奏。「朝食と音楽の会」についての丁寧な説明の後、始まりました。小さいエンドレスのテープレコーダーの録音ボタンを押し、入り口のドアを開ける青木さん。(開けてから押したかもしれない。)ドアを開けたわけは、演奏が始まるとみなすぐに理解したようでした。ドアの外は、初冬の冷たい雨。前を通る東中通には、忙しくしぶきを上げながら車が走っていました。海の波のような、そのしぶきの音にあわせての信じられない程の(大げさではないのです)素晴らしいギターによる演奏。車の音が音楽として編集されるのではなく、車の音を少しだけ「音楽」のそばによせた、そのような印象。雨水が排水溝に流れる音までが美しく聞こえ。バランス・レイアウトの感覚にほどんど感動することになりました。ドアを閉め、さっき録音されたテープを再生し、さっきの演奏と共演する青木さん。記憶を音にしたような、つい10分程前の音。その演奏も別のテープに録音されました。2度目にドアが開けられたとき、外はやはりさっきとは異なる音。さっき〜今の時間を意識する。2つのテープに録音された演奏との共演のあと、然るべき瞬間にプレイヤーが止められ、その演奏が終わりました。なんということでしょう。


 演奏の後、待ちに待ったマリールゥさんの朝食。梅ののった玄米粥、青菜お浸し、白菜と昆布の漬け物、人参の糠漬、筑前煮。一皿ずつ各テーブルに出されました。煎ってから煮た粥は、少し焦げのついた餅のような香ばしい香り。米にあう、塩が控えられた漬け物を、まずでサラダのようにお腹いっぱい食べてしまった。さすがだなと、思いながら食べていました。みなさんで集まっての朝食、やっぱりいいものですね。英美子さん、鈴木さん、御馳走さまでした。毎日食べものと向き合っている貫禄のようなものを感じました。



 漬け物をかじりながら始まった、アスナさんの演奏。5月のfleaongakでは、佐藤実さんのガラス管から発せられた、オルガンのドローンが演奏されましたが、新潟4回目の今回は小文字名義のギター。朝から念入りにフレーズを確認していましたね。一音一音ハーモニクス音が重ねられる、ギターの柔らかい反復。マリールゥ全体が、柔らかなドローンによって満たされました。アスナさんらしさが感じられる音(なんというか、やっぱりかわいいのです)と、ゆっくり変わっていく展開。息をつかせない、充実の演奏でした。(余談。この翌日、アスナさんとシバタさんと、上越の小川未明文学館に行くこととなりました。きっとなにかよい物語の発見があったのでしょう。)


 2種類コップに注いだ氷水と酒の瓶。最後は、hofliこと津田さんによる、器楽版「湿度計」の演奏です。5月のfleaongakの会場音楽(私は糊の役目だと思っている)に1曲選んだ事から、アスナさんに紹介していただいた津田さん。今回のライブのきっかけであり、素晴らしいアルバム「湿度計」。(思い入れがたくさんあり、ライブ前後に何かと言えばこのアルバムの名前を口に出していたような。)コップを揺らし硝子と氷のすれる音と、水を注ぎ移す音。酒の瓶の空気を移動させながら、ちいさなマレット(?)で叩く。(思っても見なかったいい音!)それが水のイメージから離れ、光の粒子のように煌めいて響いてきました。伸びやかで静かなギターの演奏、CD「湿度計」とは異なる音楽。そう、ここはSTARNET RECODEではなく、マリールゥでした。なにか、この空間のサウンドトラックのようであり、ラジオゾンデと同じく画のよう。残念ながら終わってしまうこの音楽に、この会に、会場にいた20人程からはたくさんの拍手がありました。


 最後にマリールゥの英美子さんから、献立について一言。学校のように みなさんで「御馳走さまでした」の声でこの会は終わりました。
限定10人の小さい会ながらも、本当はたくさんの方に聴いていただきたかった今回の演奏。来ていただいたみなさま、本当にありがとうございました。またいつの日か、今回のような会が出来たらいいなと思っています。

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