20110418

#4_salmo report

サルモ・サックス コンサート&トーク、終了しました。
会場に足を運んでくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。
とても充実した時間になりました。
少しだけ当日のことを振り返りたいと思います。

セッティング中の福島諭さん


はじめは福島諭さんによるラップトップでの演奏。
今回、山内桂さんの完全アコースティックのセットを念頭に置き、大きなスピーカを使わず、小さなスピーカーを会場の隅々に配らってはというアイデアから、複数のスピーカが用意されました。上向きのクリアなスピーカ、携帯型のラジオ4機、お椀型のカリンバに付けられた振動型スピーカ、そのひとつひとつを席を囲むように配置。携帯型ラジオは思っていたよりも出る音は限られていて、ギターのハーモニクス音の楽句モチーフ(このフレーズが私は好きです)が、ノイズの混じりに繰り返され、どこから聞こえているのか分からないローファイさに包まれました。興味深いことが、離れたところに配置した携帯型ラジオの定位で際立っていたのが「サー」というノイズの音、そして(福島さん自らレポートで触れていますが)同じようなカタチのラジオ機でも、まったく質の違う音を発していたことでした。基本的な構成に則しながら、半ば実験的に展開していくような演奏のなかでも、福島さんのおと選び(おと遊び?)やそのバランスにより素晴らしいパフォーマンスになりました。今回の方法、次の機会にもまた試みたいと福島さんと約束をしました。


福島諭さんによるライブ・レポート
http://mimiz.org

山内桂さん 手にはソプラニーノ

古い柱時計が印象的な真ん中の部屋に移り、山内桂さんの演奏。
静やかな雰囲気で古い柱時計の下に立った山内さん、ソブラニーノを持ち演奏したのは「Chikushi」という曲。演奏して間もなく、「ああ、これはいい音だ」と思いました。音と音のうつりかわりに覆る短い音にも、長く伸びる不思議な揺らぎにも、サックスという楽器にこれまで感じた事がなかった懐かしい、異国からみた望郷感のある新鮮な音楽です。アルトサックスに持ち替え即興演奏。音が鳴る・聞こえはじめる瞬間を意識させるような静かな即興で、「演奏している」というより「その音の減退の間の光る瞬間」に淡々と没入している山内さんの音の世界が伝わってくるものでした。ライブ前に行ったインタビューでは作曲と即興の違いについて伺っていて、それに対して山内さんは「自分の中の最重要なテーマは音質…「音の質」で音楽を見た時にジャンルの意味はなくなる」と。今回の作曲と即興、交互の演奏はその曲への集中力は幾分異なるものでしたが(緊張感のある即興にはかなりの集中力が)、その「ききどころ」は確かにあまり差がないものです。そして、ソブラニーノでしなやかなテーマ曲(?)「salmo」を演奏。その音の素質は水しぶきを上げていました。


録音作品「Asami/朝見」と「祝子/houri」に収録された曲「Kage Ballad」。私は山内さんにその曲が好きなことを伝えたところ、唯一ジャズのアレンジをしたことのある曲だと仰っていました。(録音はそれとは別のアレンジ)そういえば、録音作品にも、今回のパフォーマンスにも殆どジャズや既存の音楽ジャンルの臭いが感じられません。演奏を聴いて強く感じた事は「サックスの響きそのものの異国情緒」。作曲作品の演奏も、即興演奏も新鮮さがあり、それは知らない国の民族音楽のCDを初めて聴いたときの気持ちに似ていました。パーソナルな民族音楽。山内さんは自らの音楽世界を差して「salmo sax」という言葉を使っています。私が感じた民族性は、どこから湧いてくるものなのでしょうか。「サルモサックス・ワールド」だったのでしょうか。



音楽の鑑賞、その後の和やかなトークを通じて、山内さんの音楽の核心に触れられる貴重な時間になりました。今回のfeaongakは「音そのもの」をリアルに感受できる音楽会だったと思います。実は、落ち着いた気持ちでこのコンサートに向き合う事に難儀していましたが(当日も大きな余震がありました)、小さな音の集いを企画できる事、音楽を中心に時間や空間を共有できることはよろこびです。素晴らしい会場を提供くださった越野さん、スタッフの内山さん、さゆりさん、ありがとうございました。

追記:会場には音楽の活動をされているかたも多く見えられましたが、サキソフォニストのナサニエルさんNathaniel Catchpole)もその一人。イギリスの即興演奏グループAMMのリリースで知られるMatchless Recordingsから、サックス即興演奏の作品を発表している方で、今回初めて会うことができました。今後fleaongakとして彼のライブに関われればうれしいです。


(そのほかいろいろ思った事がありましたが、上手にまとめられないものですね すみません…)






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