20120917

#5_report

ワークショップ「みみをすます at 新潟鳥屋野潟」
津田貴司/福島諭「ふたつの音風景に耳をすます」
ご参加・ご協力いただきありがとうございました。

少しだけ、参加者としての個人的な感想、印象に残っている断片を。

ワークショップ「みみをすます at 新潟鳥屋野潟」
9月8日(土)午後1時 天気:
最髙気温33.2℃ 湿度68% 西の風 平均風速2.4m 気圧平均1017.3hpa

鳥屋野潟公園・水辺の広場を出発。水辺から遠ざかりながら住宅地を歩き、また水辺に近づいていくコースを辿りました。記憶に残っている音は、対岸・清五郎方面から水面を渡って公園まで届くビッグスワンのアナウンス。住宅地できこえた、野球場の歓声と近くのトラクター、遠くの車のぼやけた音塊。そして「ジリジリとした静けさ」。野球場やトラクターの音に囲まれながら歩いていると、住宅地の曲がり角や、家の影という風景の輪郭によってきこえかたが変わることに気づきました。(雨の降る日に家の中にいると、その雨が家の形をトレースして空間を強調しているように思うことがあります。音で感じる空間と、空間を隔てているものの輪郭。)
下見で歩いた一週前の土曜日は、乾燥した東風が吹くフェーンのような気象。その風にのって水辺の気配(湖沼のにおい)が届いていたのですが、9月8日は西風、ヨシキリのような水鳥の気配もなく、水辺が遠く感じられるという発見がありました。はっきりした音が凪ぐと、周囲はぼんやりした静けさに。寒い季節に感じる張り詰める静けさとも違い「ジリジリ」という音ではない音が常にきこえていたそれが夏の日の静けさというもの、なのでしょうか。(やはり、暑い日には暑い日のきこえかたがありそうです。)そして、この「ジリジリ」という、ふだん擬態語で表す静けさ・気配レベルの感受で、季節の移り変わりを感じているのかもしれないと、少し考えながら歩きました。
音の案内人・津田貴司さんは、時に音を指差すように教えてくださいました。そうやって気づく音もあり。きいているつもりでも、気にしていない音もたくさんあるのだと、おもしろい発見がいくつも。はじめて参加された方から、行きと、帰り道のきこえかたの違いについて感想をいただいて、説明のしようのない(答えのない)「みみをすます」という体験を共有できたのだと実感がありました。感想の交換もまたワークショップの楽しみです。
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津田貴司/福島諭 ライブ・パフォーマンス&トーク
「ふたつの音風景に耳をすます」
9月8日(土)午後7時30分
天気:曇一時雨後時々晴、雷を伴う

開場の時間が近づくと突然、滝のような雨と雷鳴。
雨の様子を見ながら、少し遅れて津田貴司さんの演奏スタート。

ギターやオートハープでのドローンを主体にした演奏とは異なる、さまざまな鳴りものを用意した即興演奏。床に置かれた石やボトル、木の上で転がされる石、鐃、貝やボトルの水。SEのような演出ではなく、その音具に眠る記憶、時間と空間とが交叉することで生まれる一つの風景。この夜は、たとえば玉砂利の広がる河口。(この会場も砂地や河端が開拓された土地だったと後で気づくことに)その空気につつまれるような演奏だったと振り返ります。また途中、停電というハプニングもありましたが、その不意な暗やみの中で振りかざされた鐃の音色も不思議なものでした。

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続いて、福島諭さんの演奏へ。演奏に先立って、この演奏のためのプログラムを視覚化したものを見せていただいていました。そのプログラムの印象をなぞらえながら体験した今回のパフォーマンス。鋭利ともいえる音色、床から天井へ立ち上る、音の建造物。音響について感じたことは、福島さんご自身の覚書より抜粋して

私の演奏は、5月に画廊FullMoonさんで濱地潤一さんとの二人展をした際に唯一ソロで演奏した《無題1:氷中フロレットより移植されたもの》を12音平均律ではなく、各音程を12等分する変則的な平均律を扱えるように拡張したプログラムを走らせた。《無題1-2》ということになるだろう。実際に鳴っている音数は5月の時より少ないことはないが、円秀さんは音数が少ないように感じたとおっしゃった。そう言われてはっとするのだけれど、12平均律から離れた音は、時には倍音/音色と関わるカテゴリーに吸収されて認知される場合もある、のかもしれない。そう考えれば鳴っている音は相対的に減ることになる。とすると果たしてこれは拡張なのだろうか。 mimiz.orgより

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パフォーマンス後には、演奏の簡単な解説からワークショップの話。そして、普段きいている音の話題へ。スズメが、田んぼから一斉に飛び立つときの炎のような音。桜の花びら、車のタイヤ、川の水音の点、それらが集合になったときのきこえかた、その一つ一つの音のこと。私は「気配」という視点で、ゴキブリの話を挙げました。ゴキブリには尾肢と呼ばれるセンサーがあって、微細な感覚毛で空気の流れを察知するそうです。このゴキブリが察知している人の気配というものが、空気の流れ〜気圧の微細な変化なら、ひょっとすると言いがたい「気配」というものは「気圧」のことなのかもしれないと。(け‐はい【気配】、古くは「けわい」。exformation

今回のタイトル「風景」。当初はワークショップの流れから、自然音のようにきくというアイデアがありました。しかし、パフォーマンスに対するイメージを限定することのないよう思索を続けていくうちに、「風景」は音楽家の素地/コンテキストなのではと。津田さん、福島さんを対比するのではなく、それぞれがもつ異なる素地に堆積してできた「二つの風景」、そのきき方への導入として。


あらためて、みなさまに感謝いたします。またお会いしましょう!
photo: satoshi fukushima report text: tomoyuki fujii

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