20100407

みみをすます in 新潟 レポート

津田貴司さんによるワークショップ「みみをすます in 新潟」のこと
やはり風が冷たい28日。雨通しであれば、屋根のある場所に移ってしようと、あらかじめ津田さんとお話していましたが、幸いに、予定していた順路で決行。午後1時前になると、続々と参加者のみなさんが砂丘館の正面に集まります。昨日のライブに来ていただいた方が多く、とてもうれしいことでした。初めにみなさんであいさつをして、津田さんから手引きが配られ、今回のワークショップ「みみをすます」についてのかんたんな説明がありました。「音を聴く」に始まり、「静けさを聴く」を経て、「みみをすます」の状態へ。わかるようで、わからない各々はじめての体験。何はともあれ出発することにします。


参加者として感じたことを中心に、様子を思い出しながら。


(住宅街で、音を聴く)


まずは「音を聴く」ことから。といっても、じっと集中するのではなく、お喋りをしながらゆっくり歩いていきます。静かな住宅街を歩きながら、まわりの音に反応ながら。住宅からは、子どものどたどたがやがやいう音が。自分の足元、蹴飛ばされる石や、地面の素材の音がしています。音が少なければ、音を出していてもよし。海までの道路はゆるくアーチ状になっていて、距離で聴こえが変わる、といったことを、津田さんが立ち止まってお話しました。(その付近には、「ドン山」という、かつて正午を告げた大砲がありました。新潟でちょっとおもしろいサウンド・モニュメント。)


その後、海が見える道に。視界が開け、その分とても寒いコースへ。砂風を防ぐための松林の中を歩きます。この林周辺にはこれまで冬鳥が見られましたが、ワークショップの日は鳴き声はせず、とても静か。左手に海の潮の音が聴こえ、木々に囲まれています。どなたかが、カンカンゴンゴンと音を出してみると、林の中ではその音は鈍く響きました。ちょっと山の中のような、木の反響。林を出ると、海の音。みなさん、落ちているもの弾いたり、排水管に耳を当てたり、海に面した5階くらいのマンションの前に佇んで車か波の音を聴きながら、会話は控えめに黙々と、でも楽しそうに歩き続けます。(この静かで、楽しそうな雰囲気はちょっとおもしろい様子です。)強い風でからだを冷やしながら、最初の目的地「日和山展望台」へ。展望台の上からは、まちがよく見えます。そして、へんなイラストの海の図も。展望台下の螺旋の形状から、手をたたいてエコーを楽しんでみます。


ここまで「音を聴く」コースでしたが、その周辺が静かなことから「静けさの向こうのにある音」にも、自然に耳をすましているようでした。



(寒かった日和山展望台)


その後、津田さんから「静けさを聴く」のコツを教わり、それを意識しながら、まちに向かって坂を下ります。「静けさ」といっても、無音というわけではなく。大きい音じゃない音、遠くに聴こえる音、もやもやした音など、はっきりしない音を積極的に聴こうと試みます。坂を下りながら(海から遠ざかりながら)はっきりしない音、雰囲気のような音が移り変わるように感じました。途中、参加者のKさんが生まれた味のある建物が。少し歩いて、「日和山住吉神社」に到着。ここは、かつて船のための天気予報「日和見」をした場所。海上安全の祭神が祭られている神社です。喧しく鳴くヒヨドリに囲まれながら、ここでもしばらく、ぼんやりと音を聴き探しました。

のんびり歩いてきたので、少しだけペースを上げながら、本町通りへ。これまであまり聴こえなかった車のエンジン音が近くにあります。遠くでなっているようなボーとしたあいまいな音は、角の湯という銭湯のボイラーだったでしょうか。天気のためか、わりと静かな、古い商店街を歩きながら、土俵が印象的な「あけぼの公園」で小休憩。没頭したことと歩いたことで、少しみなさんお疲れさまです。飲みものを飲みながら、感じたこと、聴こえた音を話しあいました。


商店街には道路の狭さや、通行人の多さ、いちブロックの広さ/曲り角の多さで、そこだけの音のリズムがあるようだと感じました。その商店街らしい音が聴こえる中、上(白山神社方向)に向かって歩きます。ここでいよいよ冷たいみぞれが。そこで「西大畑公園」でと予定していた「みみをすます」を、古町の雁木アーケードの下で行います。これまでとは違い、何が鳴っているか、どこの音なのかを聞き分けずに、もっとぼんやりと模様のように聴いてみようと試みます。みなさん、各々好きなポイントでみみをすませます。


(古町のアーケード)


より目ならぬ、より耳?
ぽちゃぽちゃという雫の音
ぼんやり


(古町の音にみみをすますasunaさん)


アーケードの下でぼーっと佇む人は、通りすがりの人から見ると、ちょっと怪しい様子。う〜んやってみると、違いがわかったような、わからないような。でも、それぞれで音をすっかり楽しまれていたようです。雨だれの音は、みなさんが「いい音だったね」と仰っていました。みぞれの中を、急ぎ足で砂丘館まで。津田さん曰く、「聞き分けのない耳」(可笑しい表現です)だと普通の生活/行動が危ないので、気ままにお喋りをしながら、西大畑公園や、大畑の住宅街を通りながら戻ります。そうやって、いつもの耳に「戻して」いきます。


実は「みみをすます」の状態に、なにを感じたか/どう聴こえたかをこのレポートで伝えようと思っていましたが、実際いちばん文字にしにくいものだなと、今書きながら思い出しています。印象的なことといえば、音に注意深くなるにつれて、目立つ音以外の、地味な音(?)の動きに過敏になるように感じたことでしょうか。そのことにぼんやり没頭(集中ではなく)していると、耳が大きくなっていくような気持ちになります。


砂丘館にもどり、座敷であたたかいお茶を頂きながら、歩いているときに感じたことや、これまでの生活で感じてきた音の話題を、思い思いに話しました。音の発見の充実感。ワークショップを経て、みなさんには、そういう不思議な一体感があるようでした。何か、大切なことを知ったような気持ちになりますが、そういうものもよく言い表せないものです。純粋に「音ってたのしい!」ということなのかもしれません。




今回、ワークショップをひらいてくださった津田貴司さんは、参加者それぞれの体験の課程を大切に考えていて、一から最後までを教えるという内容ではありませんでした。だから、「講師」や「先生」ではなく、「おと案内人」。なので、「上手にできた/できない」ではなく、ひとりひとりのペースでの発見を楽しむことができる内容だったと思います。参加されたみなさんも、とても楽しそう。




今回参加された方は、東京から来ていただいたHさん、美術の作家さんのTさん、グラフィックデザインのプロダクションを営むKさん、レコケンでお世話になっているSさんなど、スタッフあわせて15名ほど。前日のライブに出演いただいたsawakoさんとasunaさんも最後まで参加。sawakoさんは、歩きながら録音もしていた様子です。ご参加いただいたみなさま、スタッフのみなさま、お茶を煎れてくださったかおさん、そして津田さん、お疲れさまでした。寒い日でしたが、一緒に体験ができてとても楽しい日となりました。本当にありがとうございました。


※参加してくれたU兄さんがいいことを書いていました。ありがとう。→ 




(だめな感じの海の図:日和山展望台にて)



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