20100404

空と余韻の音楽 レポート

春のぽかぽかとした陽気の中…と想像していたらそんなことはなく、天気がとても心配された3月の最終週。27日は、午前中こそ青空が見えていましたが、風はとても冷たい。(ライブ中は雪が降ることになる。)

すでに前日新潟に着いて、ゆっくりいろいろなところを回られていたラジオゾンデの津田さんと青木さんは、前日の金沢collabonでのライブを終えバスで到着したsawakoさんとasunaさんとmarilouで合流。相変わらずのおいしい昼食をいただいたあと(給食のように自分たちで好きなように盛りつけし、おいしくいただきました。みそパンも最高!)、のんびりお喋りを楽しんでから砂丘館へ。一昨年のライブの際も使わせていただいた砂丘館。今回は蔵ということで、音も雰囲気もまた違く、ライブ前からとても楽しみにしていた空間。砂丘館は古い建物、だけど古すぎもせず、かつての生活感が少し残る、風通しのよい、とても好きな建物です。庭には、梅が咲いていました。

おぼろげな記憶を遡りながら、少しだけ振り返ります。

asunaさん
(写真はリハーサル、このギター姿がいい。)

少し遅い開場、asunaさんのライブが始まったのは18時すぎ。腰の高さほどのテーブルに、カシオトーン(だと思う)や、こまごました玩具がところ狭しと置かれ、ライブがスタート。ギターを手にし、ほろほろ爪弾く。ネジ式の玩具を巻いて、可笑しい音が重なっていく。途中、クラッカーをパン!と一撃。カシオトーンからは、やわらかなドローンが流れ会場の空気を満たしていく。ああ、asunaさんの音だなあと。ごちゃごちゃしたセッティング、とは、また違う整った音の世界があります。目を閉じていると、ぐーっとその物語のような世界に流れに引き寄せられていくような。これまでの録音作品に聴かれたような音もあり、こんな風に作品が生まれていくのだなあと、ライブを聴きながら考えていました。前日のセプテットとしての金沢ライブでも、文学作品をモチーフにしていたそうですが、asunaさんの音楽は、そういう読み物のページ展開と同じ、ページを「めくる」ような楽しみがあります。今回の砂丘館ライブでも、楽器によって場面が移り変わる印象で、「アスナ劇場」と言いましょうか、asunaさんのアトリエで、たくさんの面白いものに囲まれながら、次々面白い物語や、おとの楽しいアイデアがうまれてくる瞬間に立ち会っているような、ワクワクするパフォーマンス。再び、ギターをもってゆっくり幕を弾いていく。そのステージは終わりました。一昨年のmarilouでのパフォーマンスも、今回のライブも、asunaさんのギターはとてもいい音をしています。彼の音楽の中でも、とくに作家性が裸になった音のような、その飾り気のない音がとても好きです。





ラジオゾンデ
(左:津田貴司さん/右:青木隼人さん)

5月の発売に先駆けて、待望の新作「radiosonde」を今回のライブために先行で用意してくれたラジオゾンデ。(先日レーベflauからのプレスリリースがありました。)ギターを抱えて、帽子がよく似合う。音量も決して大きくなく、そーっと始まっていくこの静かで控えめな音楽には、耳を引きつけるお二人だけの魅力があります。即興的な部分を多くもちながら、そうやって数々のパフォーマンスで自然にうまれたフレーズや流れを、あらためて弾き直して作品にしているようなお二人の音楽。「即興性と構築性のせめぎあい」と、flauのページでは青木さんがそう仰っていました。2本のギターと、エレクトロニクス。青木さんの、膝にぶつけて振動する音叉を弦に触れさせたときの、独特のざらついた和音感、エスニックな爪弾きとハーモニカの色彩、それに津田さんのギターの音色の美しさ。(troposphereやequinoxの、すばらしいこと)「radiosonde」に収録されている曲(と分かるのは、翌日)を中心にしながら、人が集ったこの日だけの空気に、そっと触れていく質実な音が、蔵の空間に響いていました。「この暖かみと、懐かしさのようなものは、何だろう」と、聴きながら考えていました。とても視野が広い、気象観測気球からの風景。たしかに嘗ては、砂丘だった場所にあるこの会場から、空からの風景が見えるかような音/音楽。少し短く感じられましたが、とても充実のパフォーマンスでした。各々ソロとしての活動も注目されていますが、そのお二人によるデュオはほんとうに貴重な存在だなと思います。




会場で完売した新作「radiosonde」は5月17日に発売。
その直前、5月14日には東京vacantで、The BoatsとDanny Norburyの来日にあわせて、
ラジオゾンデも出演されるようです。ちょっとめずらしい組み合わせ。
主催は、flauとhome normal(どちらも注目のレーベルです)。必見です。




sawakoさん

待望のライブ。12kやscholeなどからの作品で聴かれる音とも違う表情があります。たぶんsawakoさんが行ったいろいろなところで録音した、ひとの気配のある風景の音や、ひとの話の声が聴こえ、宛ら映画のように音が経過していきます。精巧で、きらめきのある音と、そしてずっと近くて、現実感のある歌声、とてもすばらしい演奏。そして、その音に聴こえる作家性と、映像作家としてのsawakoさんの組み合わせがとても面白いもの。目を閉じたときに見えてくる、懐かしさのある風景と、目を開いたときの、際立った映像のデジタルプロセス。今後発表になる、winds measure recordingsというレーベル(活版スタジオ/かっこいい装丁)から作品は、これまでの12k作品のようなやわらかな音ではないと.sawacom @ NewYorkで仰っていたsawakoさんですが(曰く「シュガーコーティング0%」)、今回の演奏を聴いていると、そういう表現や音/素材選びの間口の広さや、最前衛にいる音楽家としての存在感、そして彼女の耳や感性のよさがとても伝わってくるものでした。ふわふわした夢心地の、不思議な現実みのある音。sawakoさんの一時帰国にあわせて企画された、今回の「空と余韻の音楽」、新潟で、sawakoさんのすてきな演奏が聴けたことは、ほんとうにうれしいことでした。もっと、ライブで聴きたい方です。
当日の物販には、sawakoさんが主催するてづくりレーベルtiny tiny pressの品が。以前、開催された個展「虹蚊 NIJIKA」のブックレットと、可愛い「はぎれぽえむ kilt’n'poem」(モチーフの鳥がなんともいいですよ)が並びました。こういうsawakoさんの手づくりは、とても注目したい活動です。ワールドワイドにリリースされる音楽とは、また別の顔、でもやはりsawakoさんらしさがあり、とても好きです。(DIYな姿勢にも、なんだかかってに共振。)


今週末4月10日(土)には、東京の梅上山光明寺で12kショーケース(!)と銘打たれた、注目の催し「誰そ彼 vol.18」が行われます。その中でsawakoさんは、なんとhofliさん(ラジオゾンデの津田貴司さん)とのデュオでの出演されます。予約がたくさん埋まっているようですが、もしかしてまだ間に合うかもしれません。場所は東京ですが、必見のライブです。







最後になりましたが、寒さのなか、たくさんの方にお越しいただき、本当にありがとうございました。出演されたみなさんの、今後の活動に注目していただけたら、とてもうれしいことです。


ライブが終わっても、しばらく出演されたみなさんの音の質感が耳に残っていました。その耳でワークショップ「みみをすます in 新潟」に望むことになりますが、ワークショップについてのレポートは、また後日です。



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